カーテンレースの向こうに 黒い鳥がいる
まだ夢の中から抜けきれていないわたしは
黒い鳥が窓ガラスの外にいるのか 中にいるのか わからない
窓は少しだけ開いている
眠っている間に部屋の中に入ってきてしまったのかもしれない
向こう側にいるのか こちら側にいるのか
起きるのはまだ早いと黒い鳥が言う
わたしはまぶたをゆっくり閉じる
この部屋はどこにもつながっていないと彼は言う
「とても悲しい」とわたしは言う 涙がこぼれる
完結された円の中で 黒い鳥は歌い踊る
「ぜんぶここにあるのさ きみも きみのおかあさんも きみが昔ひろった綺麗な落ち葉も ぜんぶここにね らりらりほ 」
窓は少しだけ開いている
わたしはその隙間から 風を知り 雨を知り 陽の光と夜の闇を知る
彼の孤独を思いながら わたしはゆっくり目を覚ます
ショーケースの中にいる黒い鳥が 「キイ」と小さく鳴いている
rico